【JAFCO】Career Academy オムニバス型連続講義(第1回)

大企業とスタートアップ、あなたにとっての「良いキャリア」はどちら?

~あなたが歩む、あなただけのキャリア~

  • 2021年8月6日(金)オンライン開催

短期的な転職ではなく中長期的なキャリア形成の場として、スタートアップにチャレンジする人を増やすことを目的

開設されたCareer Academy。8月6日に開催された第1回講義の模様をご紹介します。

JAFCO Career Academyについて

スタートアップの人材に多くかかわる中、その人材がスタートアップで活躍できるのかを見抜くことは非常に難しいことを実感したことから、Career Academyを開設しました。

人材がスタートアップで活躍するためには、『①認知強化(さまざまなモデルケースを通じて、どのようなキャリアパスを歩みたいか、考えていただく)』、『②適正把握(キャリア壁打ちや副業などの実務体験を通じ、自身における適正を見極めていただく)』、『③スキル強化(自身に不足しているスキルやマインドを高め、スタートアップでの活躍に備えていただく)』の3つが重要であるとして、Career Academyでは、『❶キャリア講義』『❷キャリアメンター壁打ち・副業/実務体験』『❸スタートアップスクール』を提供します。

この『❶キャリア講義』にかかわるものとしてオムニバス型連続講義を開催しています。

スターアップのHRに関与してきた中での学び

金沢)ジャフコグループ株式会社の金沢です。早速ですが、本日登壇いただく皆様をご紹介いたします。

田中

法政大学キャリアデザイン学部で教授をしている田中です。キャリア論が専門であり、ベンチャーに対する顧問もしている中で、日々経営者やベンチャー社員とも議論を行っています。この度、JAFCO様がCareer Academyを開設されたことを大変嬉しく思っています。よろしくお願いいたします。

佐藤

リクルートワークス研究所の佐藤です。企業人事向けの雑誌Worksの編集長を務めております。キャリアとしては事業会社人事の経験が長く、昨年までは人事部長として、採用・育成・制度運用・労務対応等、人事全体をみておりました。昨年4月より現職となります。よろしくお願いいたします。

森本

株式会社morichの森本です。従前は株式会社リクルートでベンチャーマーケット担当の転職エージェントミッションを遂行していました。現在は、株式会社morichの中で人材紹介事業としてCxO人材のためのジョブハンティングのほかに、経営者に対する新規事業関連の助言等社外取締役や顧問業も行っています。よろしくお願いします。

登壇者紹介
右上:森本千賀子氏、右下:佐藤邦彦氏、左下:田中研之輔氏、左上:金沢慎太郎氏(モデレーター)

テーマ①:これからのキャリアにまつわる「耳寄り」な話

個人が主体的にキャリア形成する時代。組織を超えて”キャリア資本”を積み上げていけるか。

金沢)本日の講義では、人材市場全体を俯瞰してこれからのキャリアを考えるための会としたいと考えています。それでは、テーマ①として、登壇者の皆さまから、最近のトレンドや耳寄りな話を共有いただければと思います。

田中

では私から話題提起をさせていただきます。現在では、『組織内でキャリアを形成する』から『主体的に自らキャリア形成をする時代』に変わり始めています。自らセーフティネットを敷き、人生100年時代のキャリアを考えるというものです。

ですが問題が一つあります。キャリア形成が占い・自己分析・自分を探す旅などのように、主観的・アナログ・ノーテクで行われていることです。私は『キャリア資本』として提唱していますが、このキャリア形成にテクノロジーを入れ、人材評価・キャリア開発などをより客観的・定量的に把握し蓄積されるような時代がくると考え、その基盤整備を行っています。

佐藤

日米の失業率の動向を比較してみると、キャリア形成についてのスタンスの違いがよく分かりますね。(下図を参照)

米国では経済危機になると、企業は即座に雇用調整し一時的に失業率が悪化します。ただ経済活動が動き始めると、求人数も増え始めます。今回の新型コロナでも同じ状況でした。つまり、一時的な痛みは伴いますが、適材適所で人材の動きを促進させる、人材側も新たな産業で活躍するために勉強し続けるというものです。

一方、日本はどうでしょうか。日本では雇用調整助成金(新型コロナ特例)などの対策が物語るように、人材を動かさず、企業に雇用を維持してもらうための政策です。つまり、働く人の安心を優先し、人材の動きを抑制させるというもので、主体的なキャリア形成を促す形にはなっていません。

日米の失業率(休業者の増加分を含めた場合)
日米の失業率(休業者の増加分を含めた場合)
佐藤

個人が主体的にキャリア形成をしていく時代になると、今後は、『掛け合わせ』が価値を持つのではないかと思います。これまでは、どのような経験を積んでいるか、その深さを極め、ある領域で競争を勝ち抜き、プロフェッショナルであることが重要でした。ただこれからの時代は違います。『人事×編集長×〇〇』『敏腕エージェント×母親×〇〇』のように、各テーマでは100人の中でトップ5程度の経験値だとしても、それを掛け合わせると一気に希少価値が高まります。このような掛け合わせでキャリアを形成していくことが勝ち抜くための戦略になり得るのではないか、と考えています。転職市場でもこの動きがあらわれていて、違う業界や職種に転職する人材が増えています。掛け合わせを増やすことの重要性が徐々に浸透してきているのではないでしょうか。

森本

掛け合わせが重要であることは同意見です。つまり『希少性』が増すということです。さらに言えば、『希少性』に加えて『市場性』も大事であって、市場から求められているプロフェッショナルやスキルなのかという点も意識していただければと思います。

非連続の成長を求めて、異業種・異職種への越境転職が増加傾向。

森本

掛け合わせの議論に関連して、”越境転職”もひとつのトレンドです。2009年から約10年間、転職決定者の分析をしたところ、同業種間の転職は実は3割、異業種・異職種の転職は7割であり、業種・職種の壁を超える越境転職がスタンダード化していることが分かっています。同業種・同職種でのキャリアパスであれば、現在の勤め先での延長戦のキャリアを志向される傾向があり、非連続の成長を見据えた転職が大事であると認識されている方が多いようです。また、年代別に見ると、『新たな成長を求める20代』と、『これまでの経験や知見を社会に貢献したいと考える50代』という傾向ですね。

種の壁を超えた越境転職とその推移
キャリア移行比率(全体)
佐藤

『成長欲求』と『貢献欲求』という考えがあります。若い頃は『成長欲求』が高いが、歳を重ねて経験値が増えていくと、徐々に『貢献欲求』にシフトしていきます。例えば、家庭を持ち子供ができると、子供が成長した時代のために自分に何ができるのか、何を残すことができるのか、といった思考で貢献したいと考え始める傾向があります。

田中

これからのキャリアモデルとして『プロティアン・キャリア』という考えがあるのですが、変幻自在のキャリアを資産としてどのように可視化できるかについて挑戦しています。その中で、キャリア資産を『①生産性資産』『②活力資産』『③変身資産』という3つで定義し、これまでに行った分析の結果をご紹介します。

例えば、大企業に勤めながら副業を行っている場合、『①生産性資産』『②活力資産』『③変身資産』は年齢問わず蓄積されることが分かっています。では業種別だとどうでしょうか。情報通信業や金融業では蓄積されやすく、一方でサービス業・交通インフラ業では蓄積されにくいという結果です。さらに職種別ではどうでしょうか。経営職・役員職はキャリア資産が蓄積される一方、管理部門・販売・営業はキャリア資産が蓄積されにくいという傾向です。この傾向はこれまで感覚的には理解されていた事実かもしれませんが、客観的かつ可視化される点に新しさがあります。

これを人材評価・キャリア開発に活用されてほしいと考えています。評価面談の際に「現在所属している部門・職種では、〇〇のキャリア資産が蓄積されにくいので、数年後には越境異動や越境転職しましょう」などがそのイメージです。経験や勘ではなく、テクノロジーにより人材評価・キャリア開発を変革させる、まさにCX(キャリアトランスフォーメーション)の時代です。

キャリア資産(『①生産性資産』『②活力資産』『③変身資産』)の業種別分析
森本

株式会社野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究によると、「日本の労働人口の 49%が10~20年以内に人工知能やロボット等で代替可能に」と言われています。ヒトがやっている業務は今後AIで代替される可能性がある中、ではキャリア形成を行う上で、自分はどんな業種・職種で活躍すべきかを考えていただくことも重要です。

テーマ②:大企業 or スタートアップ?あなたにとっての良いキャリアとは?

スタートアップへの転職だけがキャリア資本を増やす方法ではない。

金沢)テーマ②に移ります。キャリア形成を行う上で、こんな人は大企業に残った方が良い、こんな人は転職した方が良いなどについて、登壇者の皆さまからお願いします。

田中

キャリア資本を『ビジネス資本』『社会関係資本』『経済資本』に分ける考え方がありますが、転職とは『社会関係資本』を増やすことだと考えています。転職に限らず兼業・副業・越境学習など手段は様々ですが、前提として緩やかなつながりを生む機会に飛び込むことが重要ですね。現在のコロナ渦において、リモートでそのようなコミュニティに参加するなど、実行しやすくなっているのではないでしょうか。

森本

多くの経営者の方の相談に乗っている中で、この一年で市場が様変わりしていることを実感します。かつては給料を下げてまで背水の陣で転職するというような覚悟をもってスタートアップに行くという時代だったかもしれませんが、現在は違います。むしろ転職しながら成長を続けている元同僚の様子を見て、会社に残った人材が危機感を抱いているという状況かもしれません。ただ、いきなりの転職にリスクを感じる方もいるので、副業を行ったり、副業ができる環境に異動したりなどが増えています。

佐藤

元事業会社人事の視点でお話します。大企業に勤める方のキャリア相談にのった際に注意深く見ているポイントをご紹介します。それはその方が現在の会社の中でどれだけ評価されているか、という点です。

もしその人が上位数%のトップレベルであった場合、本当に優秀な方だと思いますので転職しても活躍できると思いますが、そのような人は10年後・20年後に現在の会社を引っ張っていく立場になる可能性が高いので、社内でのキャリア形成に目を向けることを推奨しています。自分がどんな評価をされているかは自分でも分かっているはずですよね。

では、トップ数%ではない場合、その人の状況にもよりますがそのまま会社に残り続けるのはもったいないケースが多く、外に出てもっと活躍できる場を探してみることをお薦めしています。この議論になるとどうしても大企業かスタートアップか、という対立構造で考えがちですが、大事な本質は『自分の能力を最大化して活躍できる企業や場を選択できるか』という点に尽きます。ある人にとっては大企業がそのような場になることもありますし、別の人にとってはスタートアップがそのような場になるかもしれません。

森本

転職を希望されている方とお話する際、「現在の所属は影響力の高い部門・職種なのか」「努力次第ですぐに出世するのか(上が詰まっていないか)」は確認させていただいています。スタートアップを特段勧めているわけではないのですが、スタートアップはどうしてもマンパワーが不足しているため、結果的にマルチタスクとなったり、様々な権限を付与させることになります。『ポジションがヒトを育てる』というのは事実ですね。

キャリアはORではなくAND。環境変化を意図して経験できているか。

金沢)『越境転職は怖い』という声も頻繁に聞くのですが、この怖さを和らげる方法はあるのでしょうか。

田中

ソフトランディングは大事です。日本のキャリア形成はA社かB社かを選択せよというORの考えが主流ですが、これからは同じ会社で複数の業務を担うようなANDの時代です。

また、いくら優秀な人材であっても、転職後のはじめの2か月は誰もが苦しみを味わいます。マンパワーがない、右も左も分からない自分が全部回すという経験です。ただ、このストレッチが大事だと思っていまして、『変化を起こしそれに対応すること』。スタートアップに転職したところで何一つ失敗はなく、全て自分に活きてきます。その後、再び大企業に戻ることもありますし、全て自身のキャリア形成につながります。

金沢)年齢によって転職すべきか否かの違いはあるのでしょうか。

森本

大企業で20年以上務めた社員であっても転職は決して無しではありません。ただ、家族や住宅ローンなど、守るべき環境が制約になってしまうことは事実ですね。本質としては、『覚悟や目標のない転職ならやめたほうがよい』ということです。単に友人がやっているから、友人から勧められたから、では後悔につながります。

佐藤

単に、大企業に長年勤めていた人材=転職に向かない人材、ではなく、長く勤めた人材のうち、『環境変化を経験した人材か』という点が重要です。逆に言えば、転職数は多いが同業種・同職種での転職を繰り返している方(いわゆる『垂直型のキャリア』)の場合は環境変化には弱い可能性もあります。いずれにしても、キャリアアップを想定した場合は『変化への適応力』が大事ということです。

田中

私も法政大学に勤めながら、いつでも転職できる準備をしていますよ(笑)。自分が必要とされる人材であることを常に模索することが大事であり、一人ひとりのこの姿勢が日本の経済を支えるのではないかと思います。

中途半端な副業は逆効果。現業も含めて自分が成長するキャリアを考え、相談できる環境が必要。

金沢)一人ひとりが今後のキャリアを考える上で、留意しておくべき点を教えてください。

佐藤

大事なポイントは、自分の成長が加速するようなストレッチな環境がどのような場なのか、という点です。成長やストレッチの機会が現在の勤め先で提供されているのであれば、そのチャンスを活かすべく集中すべき時かもしれません。もしそのような環境ならば副業は今このタイミングでは必要ないと思いますし、必ずしも副業すればよいわけではありません。

企業の人事担当の時に感じていたのは、『現業でしっかり成果を出した上で、副業することは大歓迎』です。気をつけてほしいのは、副業がキャリア形成につながらず、現業・副業ともに中途半端になってしまうリスクです。このような総合的な判断は自分自身で客観的に行う必要があると思います。

森本

今持っている知識や経験のうち5年先でも使えるのは15%と言われています。つまり、どんな人であっても継続的な学習とインプットは大事ということですし、テレワーク・リモートワークの普及により使える時間が増えた今だからこそ、意識すべき点だと思います。

田中

『企業の経営戦略や事業戦略は皆で考えるが、キャリア戦略は個人で考える』、この慣習には違和感があります。キャリア形成について他者に相談をして良いという空気を作り出すことが必要だと思いますし、キャリアアカデミーがそういう場になっていくことを期待しています。

金沢)それでは本日の講義を終了いたします。誠にありがとうございました。

今後のCareer Academyについて

Career Academyは月に2回の頻度で開催しています。次回の第2回は『大企業とスタートアップの両立?副業を通じた自己実現に取り組むロールモデルに会おう!』というタイトルで、大企業に勤めながら副業している方に登壇いただきます。

また、アカデミー受講者の皆さまには、『❶キャリア講座の継続参加』『❷メンターへのキャリア壁打ち』『❸副業など実務経験機会』をご提供し、キャリア形成を自分事にしていただくことをご支援させていただきます。引き続きご関心いただけますと幸いです。

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